「時計仕掛けのオレンジ」

監督:スタンリー・キューブリック(イギリス)
昨年亡くなった英国の鬼才、スタンリー・キューブリックの近未来SF。この監督の作品だと「2001年宇宙の旅」が代表作として語られることが多いが、僕はむしろこちらの方が好きである。
舞台は近未来のロンドン。但し七十年代の作品なので、確か二十世紀末という設定であったと思う。保守政権下のイギリスは荒廃し治安の悪化も著しく、政府は強権を発動し事態の収拾を図ろうとする。その過程で左右両陣営より政争の具とされ翻弄される不良少年アレックス(マルコム・マクダウェル)を主人公に、人権を抑圧し、市民一人一人より国家の秩序を優先する管理社会の恐怖を前衛的に描いた傑作といえよう。
とても三十年近く前に作られたとは思えないアバンギャルドな美術と、クラシック音楽を巧みに使用している点、時代を感じさせない凄みのある作品である。
イギリスはサッチャー女男爵による恐怖政治をようやくに脱し、労働党政権によるリベラルな社会が実現しつつあるが、悪法を制定し侵略戦争とファシズムのシンボルである日の丸・君が代を強制し、官憲による電話盗聴を令状無しに認めるようになったこの国は、キューブリック監督が描こうとした恐怖社会にまっしぐらに突き進んでいるような気がしてならない。ゲイというマイノリティである我々にとって、座視してはならない問題であろう。



「ダントン」

監督:アンジェイ・ワイダ(ポーランド)

1982年フランス・ポーランド
ポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督がフランス革命を題材にした大作であり、「大理石の男」('76)、「鉄の男」('81)と共に同監督の“革命三部作”を構成する。おフランス革命という激動の時代に生き、闘い、共に断頭台の露と消えると言う悲劇的な人生を歩んだ対照的な二人の革命家の友情、対立、葛藤を描き、人間の生き様、崇高と卑劣、公と私などを骨太に描き出すことに成功している。野人ながら民衆の支持の厚い主人公、ジョルジュ=ジャック・ダントンを演じるのはフランスの名優ジェラール・ドゥパルデュー、清廉潔白ながら冷酷非情な理論家で最後には独裁を目論む貴族的な革命家マキシミリアン・ドゥ・ロベスピエールには監督の母国ポーランドのヴォイチェフ・プショニャック。82年の公開当時フランスでは様々な論争を伴い大ヒット作となったそうだが、僕がこれを劇場で見たのは大学一回生の頃だったろうか(つまり84年頃)。確か今は亡き、高麗橋の大阪三越劇場でのことだったと思う。ワイダ監督独特のかなりグロいシーンもあるのだが、非情に感動したことを憶えている。政治や革命に熱くなることのない最近の若い世代に、是非見てもらいたい作品である。



「八月の鯨」

監督:リンゼイ・アンダーソン(イギリス)
1987年カンヌ国際映画祭特別賞、全米映画批評家委員会最優秀女優賞受賞のこの作品は、「おばあちゃんもの」に弱い伯爵的にはツボにはまった作品である。


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