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Gourmet et Boutique d'Osaka T

ムジカ・・・・・・大阪市北区堂島浜
僕が同志社大学一年生だった千九百八十四年に先輩に連れていってもらって以来、もう二十年近く通い詰めている、一番お気に入りの喫茶店である。自己紹介にもあるように僕は筋金入りの甘党であり、紅茶とケーキに目がない。その僕が、多い時には週に五回ほどもこの店に行くのであるから、どれほど気に入っているか解って頂けるであろう。
今でこそ紅茶をポットでサーヴする喫茶店もある程度は増えたが、この店は日本ではじめてきちんと英国式にポットで入れた店として知る人ぞ知る老舗であり、2002年に創業五十年を迎えた。味、雰囲気、客層、そして価格の全ての面で他の喫茶店の追随を許さない、素晴らしい店なのである。
使用する茶葉は全て自社輸入であり、ケーキも全てオリジナルである。スコーン、マフィン、サンドヰッチ類も勿論自家製。独自に輸入する紅茶はスリランカ、印度、中国を中心に世界各国の珍しいものも揃っており、各産地、各季節毎の新茶も入荷する。そして紅茶単品で430〜550円、ケーキセットが650円、イングリッシュティーセット(マフィン&スコーン)も700円、その上三段重ねの豪華なアフタヌーンティーセットでも1350円という値段構成は、良心的という域を超え驚異的とすら言えよう。リーフティーをポットでサーヴする店なら、まず紅茶単品で700〜1200円が相場なのである。
にもかかわらず、安っぽい雰囲気など微塵もない。インテリアも凝っており、壁面はオーナーの紅茶コレクションで埋め尽くされている。音楽はクラシック、そして客層は文豪谷崎潤一郎の傑作、「細雪」の世界そのもの。まさに関西でしか有り得ない、そしてこの店でしか有り得ない世界である。僕にとっては喫茶店の一つの究極であるといっていい。
紅茶、そしてケーキをゆっくり味わいたい方には、是非にお勧めしたい。梅田から歩いて十分ほどはかかる裏通りのビルの三階という立地にもかかわらず土曜の午後など行列が出来ることもあるが、わざわざ行くだけ価値は十分にある。
同店の奥には、同系のカフェレストラン「cafe
tous les jours」があり、こちらもお薦めである。カレー、パスタなどが手ごろな価格で提供されているが、値段以上のものは出る。パーティールームもあるが、何度かオフ会の会場に使用し、その都度大好評であった。
場所は梅田から四つ橋筋を南下、渡辺橋北詰、サントリー本社向かいのアクア堂島ビル(大和銀行堂島支店)のフォンタナ棟三階である。
ローランド本社ショールーム・・・・・・同上
言わずと知れた、世界的キーボードメーカーの本社一階にあるショールームである。しかしポピュラーミュージック用の楽器は殆どなく、クラシック系が大半を占めているのが嬉しい。ローランドブランドの電子オルガンは汎用タイプであるが、米国ロジャース社のブランドで作られている電子オルガンは完全なパイプオルガンモデルであり、パイプオルガンをこよなく愛する僕にとっては垂涎のオルガンである。デジタルサンプリングによる音色は素晴らしく、スピーカーを通して聴くと本物と殆ど区別出来ない域に達している。中には本物のパイプを組み合わせて鳴らすタイプのものもあり、何時間弾いていても飽きない。自由に試弾出来るので、鍵盤楽器がお好きな方には面白い空間であろう。
場所はアクア堂島ビル東棟一階、西棟一階の大和銀行堂島支店が目印となる。
ジュースエイト・・・・・・大阪市旧南区、道頓堀川戎橋南詰近く(詳しくは秘密)
まぁまず絶対に見つけられないところにある、究極に美味しいジュース専門店である。
最初に断っておくが、僕は威張る商売人は嫌いである。職人気質を履き違え客より威張る商人など、最低であると思う。従って「偏屈な頑固親父がやっている店」の類にはまず行かないのであるが、ここだけは例外なのである。
カウンターと四人がけのボックス席が一つだけ、十人も入ればきゅうきゅうの狭い店内は、いつ行っても満員のことが多い。メニューは大抵二〜三種類のみ、苺、メロン、桃などその季節折々の果物と、定番のバナナである。そして恐らく八十歳は優に超えているであろう「頑固親父」そのものの大将が、神業的な包丁捌き、ミキサー捌き(?)で天上の飲物も斯くや、と思わせる凄いジュースを作ってくれるのだ。何人で注文してもコップにぴったり、足らないことも余ることもない量まで、人間業とは思えない。
頑固親父と言っても、むやみに威張り散らす「勘違いしている馬鹿」ではない。バナナの後に桃を頼んだりしたら「味が判らんようになる」と叱られるが理に適っているし、いつまでも粘っていると「うちはゆっくりして貰う店と違いまんねん」と言われてしまうが、順番待ちのいる狭い店を考えると当然である。ただ、複数で行った場合全員同じ物を頼まなければならない点は、玉に傷といえよう。
ということで、注文してから飲み終わる迄せいぜい十五分で、天上の美味を満喫できる。あまり荒らされたくないので敢えて場所は詳述しないが、探すのもまた楽し、であろう。
ヒント・・・窓から道頓堀川の噴水が見えま〜す。
明治軒・・・・・・大阪市旧南区旧清水町(大丸心斎橋本店の本館と南館の間を東へすぐ)
「洋食屋さん」が大好きな僕であるが、その中でもここは自分的に一番懐かしい味で、幼稚園に上がる前から両親に連れられてしょっちゅう行っていた、オムライスの老舗である。昔は心斎橋筋に直接面し、丁度大丸本館の真向かい辺りにあったのだが、二十年ほど前に現在地に移転し、更に近年ビルに建て替ってしまった。そういう意味では“レトロ”な風情は失われてしまったし、昔は無名だったのが今では「北極星」と並び押しも押されぬ有名店になってしまったので敢えてここで取り上げることもないのだが、味は全く変っていない。この味はやはり紹介したいと思い、リストに入れることにした。
僕は必ずオムライスと串カツを注文するのだが、ビルになってからセットメニューで登場し、とても便利である。ご飯は一見したところただの単なるケチャップライスで、何も具が入っていないように見える。しかし一口食べると、その疑念は氷解せざるを得ない。豊かなビーフの味が口中いっぱいに広がるのだ。長時間かけてとろとろになるまで煮とかした牛肉が、ご飯にまぶされたソースの正体なのである。それを絶妙の焼き具合で半熟状になった薄焼き卵がふわっと包み、何とも幸せな気分になれる。串カツも美味しい。紙のように薄い肉をとても美味しい衣が覆っており、さらっとしたドミグラスソースがかかっている。茹でたキャベツと一緒に、幾らでも食べられる味である。オムライス以外では上品なハイシライスや肉の味の利いたライスカレー、串カツにクリームコロッケの附いた串コロ等洋食屋の王道を行くメニューは何を採っても美味で、かつ良心的な価格である。食い倒れの街大阪にあってなお、代表的な洋食屋の一つといっていいだろう。
カレーヤ本店・・・・・・大阪市福島区(阪神福島駅・JR新福島駅から国道二号線を西へ数分南側)
JR東西線工事に伴う第一阪神国道(二号線)拡幅のため若干移動し、残念ながら建て替えられてしまったが、ここも昔ながらの洋食屋の味を頑なに守っている老舗である。とても懐かしい黄色いドロッとしたカレールーはまさにライスカレーといった感じで、しかも300円台なのだ。トンカツなどのおかずを一緒に頼んでも、せいぜい500〜600円台で満腹になれる、何とも下町テイストな料金体系が嬉しい。梅田からでもゆっくり歩いて30分かからない距離であり、周囲も下町情緒が残る街並みで、戦災でも焼けなかった江戸前鰻の老舗などもある。食後は周囲をぶらぶら歩いて腹ごなしすることをお勧めしたい。
大黒・・・・・・大阪市旧南区(中央区)難波二丁目、地下鉄・近鉄難波駅すぐ、御堂筋千日前上ル西入ル
上に紹介している播重から御堂筋を反対側に渡り、狭い道を西に入ってすぐのところにある、かやく御飯の老舗である。かやく御飯といっても花火が入っている訳ではない。関西では炊き込み御飯のことをこのように雅な名で呼ぶのである。大興行街道頓堀に隣接しているだけあって、昔から多くの芸人・役者に愛されたことでも知られている。
純和風、木造しもたや風の店はごく狭く、七〜八人が何とか囲めるであろう大きなテーブルが二卓のみ、というシンプルな構造である。ということで、客が三人以上になると、嫌が応でも相席になってしまう。そしてメニューも猛烈に渋い。名物のかやく御飯は上方風の上品なあっさりした味付けで、小400円、中450円、大でも550円という安さだが、大なんぞ頼もうものなら育ち盛りの少年でもそれだけで満腹できそうなほどの量が出てくる。大きな丼に山盛りなのだ。そのほかのメニューも上方風の淡白な味付けのおばんざいで、生鮭塩焼650円、鰆の焼物600円、お茄子の丸煮350円、ほうれん草のおひたし300円、温泉卵200円といった泣けるラインナップ。どれを頼んでも必ず美味い。
巨大なメトロポリス大阪はミナミの中心部でありながら、店の雰囲気も値段も、ここではまるで時間が止っているようである。上方の食の原点を味わうには、一度は訪れてみるべきだろう。

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