Gourmet et Boutique d'Osaka U

松田屋・・・・・・大阪市浪速区日本橋筋・五階百貨店内
僕の冬の間のトレードマークになっている黒マントことインヴァネスコート(日本語ではトンビもしくは二重回し)を980円にて購入したる、穴場的古着屋である。自己紹介欄の写真を見て頂ければ判る通り、とても980円とは思えない大変立派なもので、勿論オーダーメイド物だ。裏地が少し傷んでいるだけで、表生地はまだまだ艶やかでとても戦前のものとは思えない。僕はスーツの上に着ているが、昔の日本人はこれを和服の上に着た。袖がないので、和服の袂が邪魔にならないからである。
大阪の日本橋は、「にほんばし」ではなく「にっぽんばし」と読む。今でこそ東京・秋葉原と並ぶ電気屋街だが、江戸時代は旅篭が立ち並ぶ宿屋街で、戦前までは神田のような古本屋街だったそうだ。表通り(日本橋筋=堺筋)には比較的大規模な大手電器店が並んでいるが、一筋裏に入ると怪しげなジャンク屋、バッタ屋などが並び、得も言えぬ雰囲気がある。その中でも五階百貨店は、入り組んだ狭い路地に沿って様々な小店舗が並んでいる最も“亜細亜的”な一角で、いつ行っても何か掘出物に出会えそうな気がする、そんなところである。その名は明治時代の高楼に由来するとのこと。浅草十二階のようなものであろう。
松田屋は、何軒か古着屋が並んでいる四つ辻にある。さすがに今では980円のトンビはないだろうが、5000円ぐらいなら手に入るだろう。貸衣装屋から流れてくるものが多いらしく、モーニング上下500円とか、グレーの礼装用ベスト150円とか、僕も随分世話になった。近所には和服の古着を専門に扱っている店などもある、とにかくディープな商店街である。ちょっと判りにくいところにあるが、都市探検者には堪らない空間であるといえよう。





マルヨシ・・・・・・大阪市阿倍野区・旭通商店街路地入ル
阪堺電気軌道上町線の起点天王寺駅前電停から西へ、ほんの数年前まで大和銀行阿倍野支店、三和銀行阿倍野支店という二つの見事な近代洋風建築に挟まれ入口を開けていた旭通商店街に入る。愚かで無能で美的センスゼロなくせに出しゃばりな行政当局による最低の都市計画により、見るも無残な高層団地群に代わりつつある旭町だが、入口付近は辛うじてかつての下町商店街の風情を留めている。その本通に入ってすぐの路地を南に入ったところ、青地に白い文字の大きな看板が目印、1946年創業の老舗洋食屋である。この辺りの路地は迷路のようで面白いので、ついでに散策されてもよろしかろう。旧遊廓「飛田新地」もすぐ近くである。
創業当時は高級なフランス料理店だったそうだが、今では場所柄もありすっかり庶民的で入り易い雰囲気になっている。しかし恐らく味の方は、創業当時の本格フランス料理からあまり変わっていないのではなかろうか? 何をとっても大変に美味であるし、子牛の脳漿のフライとかエスガルゴとか、ちょっと他の洋食屋ではお目にかかれないメニューも多い。コークス焜炉の強烈な火でじっくりと煮込まれるシチュー類などまさに絶品といえよう。煮込みが命のカレーも美味い。小さい店ながら二階席もあるが、やはりきびきび働くコックさんたちを眺めながら食事できる、オープンキッチンの一階カウンターがお薦めである。ロールキャベツもお薦め!!





はり重カレーショップ・・・・・・大阪市旧南区道頓堀・御堂筋道頓堀橋南詰
大正8年創業、大阪随一の高級精肉店である「はり重(播重)」は、御堂筋と道頓堀通の南東角に、重厚な和風三階建ての店舗を構える。すぐ隣は、大正期の外観そのままに再生された松竹座であり、このコーナーで紹介した「ジュース8」もすぐ、ミナミの一等地にある。
この店は肉の店頭販売だけでなく、最高の肉を使ったレストランを三軒、同じ建物内に持っている。二階三階は個室の座敷ですき焼、しゃぶしゃぶ、オイル焼などを供する料亭で、一階にグリルとカレーショップがあるのだ。
料亭部はすき焼き6000円からといったラインナップで、肉の質を考えればコストパフォーマンスは決して低くないのだがやはりそうしょっちゅう行ける金額ではない。それに対して一階の二店は、まさに僕の大好きな昔懐かしい洋食屋さんそのもので、何を食べても美味しい。グリルの方はビーフオムライス1000円、ランチ1800円といったところ。若干高級感がある。グリルと料亭部は道頓堀通に面して入口を開けている。
そして、今回紹介するカレーショップである。御堂筋に面し、精肉部の南側にテナントの時計店を一軒挟んでカレーショップの古風な入口があるが、実は厨房はグリルと一体になっている。さすが老舗の肉屋直営だけあって、ビーフたっぷりのまろやかなカレーの味わいは一朝一夕のものではない。それでいて550円なのだから、もう感涙ものといっていい。飛び切り美味しいビフカツの入ったビーフカツカレーが800円、チキンカツカレーと海老フライカレーも800円、ビーフワン(牛丼)650円もお薦め。トンカツ700円、ビフカツ800円はご飯もついてこの値段。殆ど社員食堂並みの料金で素晴らしい老舗洋食屋の味を堪能できる。オーダーストップが八時四十分とやや早いのが唯一の欠点だが、ミナミでカレーが食べたくなったら一押しのお店である。
場所は分かりやすい。御堂筋の道頓堀橋南詰東側、地下鉄・近鉄難波駅なら一番北側の出口を御堂筋東側に出るとすぐである。





INAXギャラリー・・・・・・大阪市西区新町・地下鉄四ツ橋線四ツ橋駅下車すぐ/東京都中央区京橋・地下鉄銀座線京橋駅下車すぐ)
TOTOこと東陶機器(旧東洋陶器)と並ぶ陶器タイルの世界的メーカーであるINAX(旧伊奈製陶)が、自社のショールームに付設して運営しているアートギャラリー。愛知県常滑市が本社の企業なので、名古屋にもある。独自の企画展を精力的に開催しており、特に会社の性質上建築関係の展覧会に見るべきものが多い。僕が都市探検家倶楽部を設立する更に前、路上観察学会創立メンバーである歯科医一木努氏の展覧会に大きな刺激を受けたのもここであった。出版にも力を入れており、ブックレットに面白いものが沢山ある。特に東京ギャラリーは書店を併設しており、建築、都市、写真集、美術、サブカルチャーなどのセレクトされた書籍を楽しむことが出来る。





美々卯道修町店(みみうどしょうまちみせ)・・・・・・大阪市中央区(旧東区)道修町・瓦斯ビル(大阪ガス本社)裏手
今や一般名詞と化している「うどんすき」は、実はこの老舗の登録商標である。そう、「美味しんぼ」に登場したことでも有名であるが、美美卯はきつねうどんの元祖である松葉屋と並び、大阪うどんを代表する名店なのだ。本店は道修町店のすぐ南、本町よりなのだが、僕は個人的にこの道修町店を気に入っている。
御堂筋より東側の道修町通は江戸時代以前からの薬種問屋街で、現在でも狭い通りの両側に武田薬品、塩野義製薬、藤沢薬品、田辺製薬といった巨大企業の本社ビルから町家風の個人商店まで、数多の薬品・化学関係の会社が並んでいる。更に堺筋を渡れば、船場の古えの大店(おおだな)建築を今に伝えるボンドのコニシ株式会社(小西義助商店)もある。
そしてこの店のある御堂筋の西側は、やはり薬品関係の会社が多いものの少し静かな雰囲気になる。大阪倶楽部の設計者である安井武雄が昭和に入ってすぐに設計したモダニズム建築の傑作瓦斯ビル(館内の「ガスビル食堂」はフランス料理の名だたる老舗である)が大きく聳え、そのすぐ裏手に純和風の町家建築である美美卯が控えているのだ。もちろんのことうどんすきが美味であるが(椎名誠氏の好物)、一人で行ってざる蕎麦一杯だけ頼んでも、奥の座敷で庭を眺めながら優雅な一時を過ごすことが出来る。混雑時を避け昼下がりなどに行けば、静かさも一入である。大都会の都心で、なかなかに得難い贅沢であるといえよう。





北極星本店・・・・・・大阪市中央区旧南区南堀江(アメリカ村南側・ユニクロの通り西側)
元祖オムライスの店を名乗る、老舗洋食屋さん。大阪市内にいくつか支店があるが、やはりこの本店が雰囲気、味ともに段突である。何しろ、純和風の料亭のような木造建築に靴を脱いで上がり、座敷で庭園を眺めながらオムライスをぱくつくことが出来るのだ。
メニューは冬季にこそ鍋物などもあるが、あとはその大半が矢鱈と種類の多いオムライスである。ベーシックな茸やチキンから、一番豪勢なのは3000円ほどもする伊勢海老入りのものまであるが、やはり奇をてらったものよりもオーソドックスなものの方が値段も手ごろな上味もオムライスらしくてうまい。半熟の卵に、特製のトマトベースのソースがかけられたその姿、僕のような洋食マニアには堪らないものがある。600円台からあり、大盛りも対応してくれる。アメリカ村が程近く、若者が多い街だが、旺盛な若い食欲にも十分に対応する店なのだ。ミナミには美味しい洋食屋さんが数あるが、その中でも外せない一店である。




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